雑感のコーナー・時々コラム

2001年度の課題

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2001年度の課題序論 01/10/14
収穫し、販売するこの時期の何たる時の速さか。ほとんど全てを一人でこなし、土日は、地場産業センターで直売。7月下旬から休みは、2日間の白浜の海水浴だけ。気力がちょっと萎えた時期も確かにあったが、昨年に比べ体調もよく、こんな景気の中でも、お陰さまで販売も順調である。もう少ししたら、課題をまとめるつもりだ。
今年の課題が生かされるのに、たぶん、3年はかかるだろう。反省し、分析し、修正して来たことが、今年の結果でもある。今年からは、短期目標と中期展望を見直し、長期戦略に生かすつもりである。

2001年度の課題@ 01/10/29
今年の収穫も全て終わり、来年度の栽培管理がスタートした。振り返ってみると、幾つかの課題が浮かび上がってきたが、その前に、今年は、どうだったのか、改めて考えてみると、収量は、少なく、小粒の傾向、着色は、良く、糖度は、例年並であった。珍しくベリーAに割れが見られたが、ジャム用の契約栽培もあり、ロスは、ほとんどなかった。販売は、極めて順調で、各品種とも例年通り品切れで販売を終了した。ただ、ベリーAは、昨年、雹害でほとんど販売できなかったし、狂牛病やテロなどの社会不安と消費減退で実のところ、少し心配していたのだが、それも杞憂に終わった。
収穫前のブドウ園を見渡すと、「いったい、これだけの量のブドウを出荷もしないで個人販売できるのだろうか。」といつも大きな不安に襲われる。

2001年度の課題A 01/10/30
基本的な経営は、ここ数年変わっていないが、育成まで数年かかるため早目に修正することが大事である。栽培管理は、特にその傾向が強い。普通の農家のように、農薬や化学肥料を制限なく合法的に使って栽培するのであれば、深い洞察力や観察力は要らないだろう。減農薬減化学肥料栽培は、当該地域の慣行栽培の概ね50%減が一つの基準である。今年7月25日付で、エコファーマーに認定された。5年後の目標が、50%減であればクリアでき、私のように現状のままでクリアしている農家はほとんどいないし、一概に、エコファーマーといっても技術レベルは大きく違う。この制度の場合、化学農薬の延べ使用農薬数でカウントされるのだが、農薬の総散布量を抑えることに重点をおいて管理している私にとっては、これで良いのかという思いがある。総散布量は、環境に負荷をかけないためには、最重要なのに制度上は、考慮されないと言うのだから、遅れていると言わざるを得ない。
総散布量をいくら抑えても、延べ使用数が多ければ評価されないというのであれば、その事も意識しながら管理して行かなければならないだろう。しかし、こちらについても当然クリアしているので、特に大きな問題ではない。

2001年度の課題B 01/10/31
減農薬栽培は、経営上、主要なテーマであるが、ここ数年は、極力、ケミカルを排除してきた結果、何処までが適切なのかと言う問題が浮かび上がってきた。食の安全性や地球環境についての意識も高まってきているが、デフレ経済が進行し、消費減退している中、売れるブドウを生産しなければ生活できない。限りなく有機栽培に近いブドウと最低限50%減農薬のブドウとでは、栽培技術は、大きく違うのだが、商品の持つ力は、ほとんど変わらないと言うのが実感である。
私にとって、減農薬栽培は、単なる結果でしかなく、栽培管理を公開することで信頼関係を築くが大切だと考えている。また、低コスト、高品質、安定生産できる栽培体系の確立が目標である。

2001年度の課題C 01/11/01
一般的に果物は、価格も高く、高品質を期待しているので、外観なども配慮しないと商品としては、成り立たないだろう。売れるブドウのキーワードは、割安感、美味しさ、新鮮さ、安心、安全、季節感である。季節感については、「売れる時」を考えなければならない。飲食業界のランチタイム、ディナータイム、週末や休日を考えれば、容易に想像つくことであるが、ブドウでも同じで、旧盆前後、秋の彼岸、10月の行楽シーズンは、「売れる時」である。これまで、正直言って、強く意識しなかったが、これからは、品種構成、収穫時期を十分に配慮していくつもりである。これは、消費者ニーズと言うよりも、生理的な欲求に近い需要と考えた方が納得できるだろう。

2001年度の課題D 01/11/02
今までは、「一年に一度の収穫だから、最高の状態でお届けしたい。」と言う気持ちが強すぎたと反省している。作物は、年によって生育の早さが違うことが多く、暦通りには行かないものである。今後、需要期には、最高の状態でなくとも納得できる状態であれば、販売するつもりである。それと品種の切り替え時、デラウエアからピオーネ、ピオーネからベリーAなどの場合、意識的に重複販売をしなかったのだが、それも改めようと思う。
収穫後半のデラウエアと収穫初期のピオーネでは、デラウエアの方が美味しいに決まっているとか、痛む前に品種の切りをつけたい気持ちやピオーネが出てくるとデラウエアが売りにくいと言った事情は、生産者のわがままと言わざるを得ない。

2001年度の課題E 01/11/03
デラウエアは、早生種で、作業のピークを低く抑えるためにも一定の面積が必要である。栽培面積も徐々に少なくなっているが、小さなお子様や高齢者にとっては、必要な品種である。初めて食べるブドウがデラウエアで、最後に食べられるのもデラウエア。「デラに始って、デラに終わる。」と言ったところだろう。ただ、甲府農場は、早場地帯で、7月中旬には、出荷可能である。7月中旬から、下旬は、あまり売れる時期ではない。8月上旬から、旧盆前後が、売れ時であるが、デラウエアを販売するには、リスクがいる。そこで、甲府第一農場のデラウエアの面積を減らし、早生系のピオーネ、サニールージュ、ハニービーナスを導入する。生育を早めるため、長梢剪定栽培とする。

2001年度の課題F 01/11/04
昨年から甲府第二農場のピオーネは、多摩ゆたかと早生系ピオーネを導入したが、降雹被害の影響などから、樹勢の弱い樹が見られるので、早生系ピオーネを積極的に増殖することにした。数年後には8月上旬から、赤系は、デラウエア、サニールージュ、緑系は、多摩ゆたか、ハニービーナス、黒系は、早生系ピオーネ、普通ピオーネとなり、詰合せが、可能になる。ただ、新品種は、収穫時になってから問題が起き、その結果淘汰することもあるので慎重に観察し、他に良さそうな品種があったら試作するつもりである。

2001年度の課題G 01/11/05
甲府第二農場は、地下水位が高く、有効態リン酸も多い傾向で、土の管理は難しいところだ。ただ、表土は、かなり改善されているので、今年は、改植区を中心にトレンチャーで深耕し、たい肥を下層部に入れるつもりである。こうすることで、苗木の生育にプラスになるし、樹勢の弱った樹は、断根されるので、思い切って切り詰め、樹勢回復を図るつもりだ。一時的に収穫量は、落ちるが、苗木の育成を早めるためには仕方ない。
また、老朽化した既存のパイプハウスを応用し、短梢剪定栽培用のブドウ棚にする予定である。その後、状況に応じて、雨除けにも対応できる方式で、これは私の考案したものである。

2001年度の課題H 01/11/06
9月上旬から10月上旬まで、詰合せを販売するため、甲府第一農場の10aを改植中である。赤系は、早生甲斐路、ルビー大久保、ロザリオ・ロッソ、緑系は、ロザリオ・ビアンコ、アレキサンドリアなどを簡易雨除け栽培する。黒系のピオーネ、ベリーAを中心に長期間、彩り良い詰合せが可能になる。もちろん、品種によっては、淘汰されることもあるが、単一品種で対応するより、多品種での対応の方が、栽培リスクが軽減されるようである。また、甲府農場の作業時に雨が降っても、境川農場まで行かずに作業できるメリットもあるだろう。9月上旬の境川農場のピオーネの最盛期には、甲府の赤、緑を使い、9月下旬からのベリーAを中心とした詰合せには、境川農場の赤、緑を使うことになるだろう。なお、甲州種も後半に必要なので、第一農場で育成している。
農地を取得し、直売を前提に栽培するためには、品種構成を見直さなければ対応できないし、完成までの時間もかかってしまうが、大きな励みにもなる。

2001年度の課題I 01/11/07
ベリーAを中心にした詰合せは、価格的にも低く抑えられるし、10月の需要期に特色ある詰合せとして販売するつもりである。今春の植付けなので、早くても3年はかかるだろう。一方、8月の上旬の詰合せについては、その時期に間に合うように収量も少なくしなければならないので、どうしてもコスト高になってしまう。サニールージュなど新規に導入した品種の中で、中心になれる実力ある品種があれば、将来的には、対応も可能だろう。その前に、今の計画を早く達成しなければならない。

2001年度の課題J 01/11/09
販売は、前年までの一般顧客、地場産業センターでの直売、インターネットでの受注の三つのチャンネルがある。お届け先からの新規のご依頼や、同じお客様から、何度も注文を頂いたり、各部門の新規取引が生産量の増加以上に増えている。最近の消費動向からすると有難い限りである。販売については、今年ようやく花開いたと言うのが実感である。これから、農地取得のため借金をし、農業経営する上で、販売力が大きなカギを握っているが、販売に不安がなければ、生産に集中できるので思い切った展開ができるだろう。

2001年度の課題K 01/11/10
インターネットからの受注は、宅配全体の10%ほどだが、このところ年率50%から80%の成長をしている。インターネット人口が増えるのに伴って、増加していると考えられる。多くが比較的若い世代で、新規の取引も多いが、もともとネットにそれほど期待していなかったというのが本音である。顧客サービスとして、情報公開を始めたので、サイト自体の存在価値は、売るためのサイトという位置付けではない。そもそも、メールのやり取りなど手数がかかるし、プレゼント企画なども、商品が足りない状態でやるべきかどうかと考えている。ネットで全てを売ろうなんて思ってもいないが、こうしたスタンスだったので、それなりに成功したのだろう。取材など相乗効果や、イメージアップに大きく貢献しているし、旧来の地道な商いの手法だけでの販路拡大よりも、時間的な速度は、かなり速まるだろう。これが、実のところ、サイトに最も期待していたことである。

2001年度の課題L 01/11/11
借地から、自作地に変わることで、全くと言っていいほど管理が変わってくる。土作りや、品種構成など今までは、短期的見通しだけでの管理であったが、今後、中長期的見通しから管理しなければならない。借地時代にしっかりとベースができているが、自作地となれば、より強く中長期展望と収益性を考えざるを得ない。従って、肥料、苗木などの初期投資が増える傾向にあるが、 返す事を前提にした管理と、継続することを前提にした管理では、正直言って、気合の入り方も違う。

2001年度の課題M 01/11/13
販売は順調であるが、栽培管理は、どうだろうか。減農薬栽培としては、エコファーマーに認定されたし、技術的には、ほとんど問題が無いようであるが、農場別の課題を上げると、
甲府第一農場は、農場の中心部が、地力がなく苗木の生育が悪いので、たい肥を積極的に投入する。秋はトレンチャー、春の苗木の植付け時には、バックホーを使うつもりである。甲府第二農場のピオーネは、改植を前提にしているので、数年後には、状態も良くなるだろう。境川農場のマンガン欠乏は、トレンチャーでの深耕に期待する。

2001年度の課題N 01/11/14
課題をどう生かすかで、その後の農業経営が変わってくる。確かに厳しい時代ではあるが、着実に成果を出している。それは、事実であるが、安閑としていられない。それでも、これだけの課題が残されているのだ。まだまだ、改善できるところが多いし、修正すべき点もある。おそらく完成は無いのかもしれない。だからこそ、次のシーズンが待ち遠しい。販売も技術も取り組むことが多すぎて、日々精進という心境である。
農業は、特にブドウ作りは、奥が深く、本当に遣り甲斐があり、楽しい仕事である。楽しく仕事をすれば、健康でいられるし、生きていることの素晴らしさを感じる。そして、すべてのものに感謝する気持ちで一杯である。

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